【 源氏語り五十四帖 】上巻 (全9巻) オリジナルテキスト付き

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【 上巻 】

第一回 桐壺きりつぼ
源氏物語の始発の巻である『桐壷』巻。光源氏の父母である桐壺帝と桐壺更衣の悲恋は、身分や境遇を越えた激しい破滅的な愛として、その息子光源氏にも継承されていきます。世間の逆風を受け、世間に押しつぶされていった両親の愛のあり方は、その後の光源氏の生き方に大きな影響を与えます。

第二回 雨夜の品定めあまよのしなさだめ
『帚木』巻より、「雨夜の品定め」は、十七歳となった光源氏が恋の冒険に乗り出そうとするそのきっかけともなった、男たちの女性評論の場面です。宮廷の雨の夜に繰り広げられる男たちの遠慮のない女性こきおろしの評を読みながら、なぜ光源氏の物語の始めに、これほど女性に辛辣な評が書かれるのかを見ていきます。今後の物語の展開にもつながる重要な場面です。

第三回 空蝉うつせみ
『帚木』巻の後半から『空蝉』巻にかけての物語です。年取った受領の後妻として暮らしていた、容貌も美しくない空蝉という女性が、なぜ光源氏の心をとらえたのか。空蝉の激しいプライドと、光源氏の若さがすれ違う緊迫した場面をお楽しみください。

第四回 夕顔ゆうがお
夕闇の中に白く咲き、明け方には枯れてしまう夕顔の花のはかない印象は、この花の咲く五条の宿の謎の女性との関係を象徴しているようです。光源氏は宿の粗末なようすから、最初は侮って名前もなのらず、覆面で顔を隠したまま通い続けますが、次第に女のやさしい柔らかさに溺れていきます。「なにがし院」への恋の逃避行の果てに、思いもかけぬ結末が訪れます。光源氏若き日の無謀な恋のあやうさとそれゆえの戦(おのの)きをご堪能ください。

第五回 若紫わかむらさき
有名な光源氏と紫上との出会いを語る巻です。光源氏が北山の僧坊で、藤壺生き写しの少女と出会い、その少女を奪うように強引に我が物にするまでのスリリングな展開は、藤壺との関係の危険な深まりと呼応・同調しています。父の妃藤壺と密通するというただでさえあってはならない関係に、さらに彼女が不義の子を宿すという深刻な事情が付け加わります。少女と光源氏の無垢な信頼関係は、その裏側に、苦悩に満ちた関係を揺影させているからこそ、一層切実に希求されなければならなかったのでしょう。

第六回 末摘花すえつむはな
光源氏は不毛な愛の葛藤に苦しんでいたころ、実はもう一人女性を口説き続けていました。摘花です。常陸宮の姫君で、当時美人の第一条件とされていた髪が長くて美しい上に、琴(きん)という幻の楽器の名手、おまけにライバルの頭中将までこの姫君に夢中のようで、光源氏も負けてはいられません。苦労の挙げ句口説き落とした女性への落胆を鮮やかに語って、光源氏の恋の独り相撲の愚かさを浮かび上がらせる趣向となっています。

第七回 紅葉賀もみじのが
光源氏の光り輝く頂点を描きあげた巻です。十八才の光源氏は桐壺帝の父帝の賀を祝って朱雀院で青海波を舞います。その容姿を物語はこの世のものとも見えない、ゆゆしく見える、輝くようだと繰り返し絶賛するのは、彼が藤壺と犯した密通の結果の皇子がこの巻で誕生することと関係があります。これほど美しい人のすることに、世俗の倫理はあてはまらないとつい思ってしまうような、鬼気迫る舞の姿だったのです。源氏物語の中でもっとも華やかで、かつ恐ろしいこの巻の緊迫と昂揚をお楽しみください。

第八回 花宴はなのえん
源氏物語の中でもっとも幽艶な巻として知られます。二つの花の宴が描かれ、一つは桐壺帝主催の桜花の宴、もう一つは右大臣主催の藤花の宴です。退位を決意した桐壺帝主催の桜花の宴で光源氏はまたしても舞を舞って人々を感動させますが、『紅葉賀』の時のような生彩は欠けていました。桐壺帝が退位を決意して、人々が新しい体制に心を向け始めたからです。右大臣主催の藤花の宴はそのような時代の転換を印象づけるものでした。そうした暗い状況の中で、光源氏は東宮に入内が予定されていた右大臣の娘朧月夜との危険な関係に深入りしていきます。

第九回 あおい
朱雀帝の御世となり政治的に不遇をかこつ光源氏は女性たちとの関係も以前のようにうまくゆかなくなります。とりわけ不満を募らせていたのが誇り高い六条御息所で、特に彼女を傷つけたのが光源氏の正妻葵上との車争いでした。葵祭で屈辱的な扱いを受けた御息所は光源氏の子を身籠もった葵上に取りついてもののけとなっていると噂されました。息子夕霧を出産直後の葵上はもののけによって命を落とし、光源氏によって深く追悼されます。哀悼の長い時間が明けた後、光源氏は若紫の少女と密かに結ばれます。

第十回 賢木さかき
光源氏をいつも庇護し続けてきてくれた父桐壺院が崩御。自由に権力をふるえるようになった帝の外祖父・右大臣の勢力は、これまでとは逆に、光源氏、左大臣勢力を庄倒し、左大臣は政界を引退してしまいます。やはり弘徽殿大后からいやがらせを受けていた藤壺は桐壺院の一周忌を期に出家してしまい、自暴自棄になった光源氏は、尚侍となった朧月夜との危険な逢瀬に溺れていきます。その密会が発覚し、弘徽殿大后にもその事実が知られると、事態は急速に悪化の途をたどります。

第十一回 須磨(花散里含む)すま・はなちるさと
官位を剥奪され、追放寸前の状況にあった光源氏は、罪名を付けられて正式の罪人になってしまう前に須磨に退去し、女性たちも連れず、わびしい隠遁生活を送ることで、謹慎の思いをあらわにしていました。琴を弾き、絵を措くことでつれづれを慰めながら、光源氏はひたすら仏道修行に熱中します。三月上巳の日、禊ぎのため海辺に出た光源氏一行は未曾有の大暴風におそわれ、その天候の荒ぶりは何日も続きました。この不吉な嵐の意味は一体なんなのか、不安と怯えの中にこの巻は終わります。

第十二回 明石あかし
二週間も続いた嵐の後、落雷で邸も炎上した光源氏が疲労困憊してうたたねをすると夢に桐壺院があらわれ、そのお告げ通り光源氏が明石入道の舟に乗って明石に移った所で、物語は次第に明るい調子を取り戻します。入道とともに音楽を合奏し、つれづれを慰めた光源氏は、入道の娘明石君に惹かれ、やがて結婚します。田舎育ちとは思われない教養と奥ゆかしさに感嘆した光源氏が、次第に明石君に心を移していった頃、彼を都に呼び戻す宣旨が下され、光源氏は上京していきます。実は明石君はこの時すでに光源氏の子を妊んでいたのです。246

第十三回 澪標みおつくし
実の息子冷泉帝の即位とともに、光源氏は内大臣の地位に付き、政治の実権を握ります。苦境から脱出できたことで住吉大社に盛大なお礼参りをしましたが、たまたまそこに来合わせた明石君は、かつてとはうってかわった彼の晴れ姿に、境遇の落差を感じ取り黙ってそこを立ち去ります。明石君にも、光源氏の忘れ形見の姫が生まれていたのですが、親子の対面は一体いつのことでしょうか。都では冷泉帝に頭中将の娘が入内し、兵部卿宮の中君も入内を噂されていますが、光源氏はひそかに藤壺と図って六条御息所の娘前斎宮の入内を推し進め外戚としても地歩を築いていこうとします。

第十四回 蓬生・関屋よもぎう・せきや 
『蓬生』巻は末摘花物語の後日談です。光源氏の須磨流謫から都に帰った後も忘れられたままの末摘花の屋敷は荒廃の度を加えています。その境遇を侮った叔母大弐の北方は、彼女を自分の娘の女房として九州へ連れていこうと画策しますが、成功しません。父宮の霊の加護を信じてひたすら光源氏を待ち続ける末摘花のもとに、ある夜、ついに…。『関屋』巻は空蝉との後日談です。空蝉は夫の常陸介任官に従って常陸国に下向していましたが、光源氏の都復帰の翌年、常陸から帰京して、石山詣でに出かける光源氏一行と逢坂の関で偶然行き合い、互いに感慨に耽ります。

第十五回 絵合えあわせ
光源氏はかねてよりの計画通り、藤壺の協力を得て前斎宮を入内させました。当初帝の愛は同じ年頃の弘徽殿女御(頭中将の娘)にありましたが、梅壺女御(前斎宮)に絵の才能のあることがわかると、絵の好きな帝は梅壺に入り浸りとなり、焦った頭中将は娘のもとに新作の絵巻を大量に集め、帝を取り戻そうとしたのです。光源氏も負けてはいられず、梅壺のもとに多くの絵巻を集め、妃の寵愛争いは、絵巻収集競争の態をなして、ついに一堂に集めてその優劣を決しようとするまでに至ったのです。

第十六回 松風まつかぜ
光源氏は新造の二条東院にかつて関係した不幸な境遇の女性たちを迎え、一括してこれを世話しようとしました。しかし明石君親子はこうした待遇を望まず、大井にあった母方の祖父宮の別荘を改築して、そこに尼君、明石君、姫君の三人が移りました。大井に近い嵯峨御堂建築に言寄せて大井を訪れた光源氏は、姫君のかわいらしさに打たれ、再会を喜びましたが、同時に彼女を幼いうちに紫上のもとに引き取りたいと考えるようになります。

第十七回 薄雲うすぐも
明石君は姫君を手放すことをためらいますが、尼君の説得もあって、ついに、娘の幸せを願って手放すことに。親しくなった乳母との別れさえ心細く、冬の訪れとともに、不安と寂しさが募っていきます。二条院の紫上に引き取られた姫君は最初こそ母を慕って泣いていましたが、やがて、紫上になついていきます。そのころ、流行病の最中に藤壺が亡くなり、光源氏は虚脱感に襲われ、一人で泣き暮らします。

第十八回 朝顔あさがお
永遠の憧れの人藤壺を喪った後、光源氏はどうにも埋めようのない空洞感を抱えていました。その満たされない思いを埋めたのが、朝顔姫君への執着だったのです。若き日の光源氏はこの従姉妹にひそかに心を寄せていたのですが、姫君の拒絶によって、淡い友情にも似た交渉が続いてきました。父を失って心細い境遇となった姫君に光源氏の思いは募り、紫上の不安は的中します。朝顔に拒絶され、紫上のもとに戻った光源氏は雪の中で彼女と語らい、過去の女性たちとの交渉を振り返るのでした。

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