『平家物語』は、治承・寿永の乱という歴史的事件を素材としながら、歴史の復元ではなく「物語」として編まれた作品です。日本の重要な転換期を描き出すこの物語が、政争が武力によって決する過酷な時代の人々のありようを、どのように映し出しているか。
本講座は、千葉大学名誉教授・栃木孝惟先生が、冒頭の「祇園精舎」から灌頂巻の六道語りまでを、全15回・6つの講にわたって読み解くオンライン講座です。

- 講座名
- 《日本古典への招待》『平家物語』
- 講師
- 栃木孝惟(国文学者・千葉大学名誉教授)
- 構成
- 全15回・全6講(前半 第1回〜第7回/後半 第8回〜第15回)
- 総再生時間
- 約25時間35分
- 受講方法
- ストリーミング配信。パソコン・スマートフォン・タブレットで、いつでも何度でも受講いただけます。
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講師からのことば
本講座は、日本の代表的な古典、『平家物語』を読み深めることを目指す講座です。古典を読み深める過去への旅は、古典をより豊かなものにすることを目指すと共に、過去から現代を豊かにするすぐれて創造的な営みでもあります。日本の重要な転換期を描き出すこの物語が、私たちの父祖・母祖が歩いてきた道筋を、また政争が武力によって決する過酷な時代の人々のありようを、どのように映し出しているか、その一端を見つめます。
栃木孝惟
全15回の講義内容
前半講座 第1回〜第7回
第一講 祇園精舎
第一回「祇園精舎の鐘」「沙羅双樹の花」を中心に約1時間43分
「祇園精舎の鐘」とは何か。その「鐘の声」に「諸行無常の響き」があるとはどういうことか。そして「沙羅双樹の花の色」が「盛者必衰の理をあらはす」とは。講義第一回は、『平家物語』冒頭の、その問いの向こうに広がる基本思想を見つめることから始まります。
第二講 遊女往生 ― 祇王
第二回Ⅰ 祇王一家の繁栄と仏の出現約1時間42分
天下人清盛の絶大な寵愛を受けた白拍子・祇王。なぜ祇王がそうなったのか。『平家』諸本で異なるその経緯を紹介しながら、この時代の白拍子の生態を眺めます。そして、加賀国出自の舞に非凡な才能を持つ一人の少女の上洛から、「祇王物語」の幕が開きます。
第二講 遊女往生 ― 祇王
第三回Ⅱ 清盛の変心と祇王の放逐約1時間27分
仏(ほとけ)という名の年若き白拍子は、都で絶大な称賛を獲得し、天下人清盛の館に推参します。しかし祇王に絶対的な寵愛を寄せる清盛は、けんもほろろに対面を拒絶。その惨めな退出に深い同情を寄せたのが、祇王その人でした。だが、そこから「祇王物語」は思わぬ方向に進みます。
第二講 遊女往生 ― 祇王
第四回Ⅲ 六波羅蜜と女たちの往生約1時間25分
清盛の邸を放逐され、新たな寵愛人・仏(ほとけ)を慰めるために邸に参上せよという命を受けた祇王は、その後、嵯峨の山里で髪を剃ります。ある秋の夕暮れ、尼・祇王の住む草庵の戸をたたく音が。衝撃的な「祇王物語」の結末と、そこに仕掛けられた往生とは何かを読み解きます。
第三講 倫理への殉死、そして治承のクーデターの発端 ― 平重盛
第五回Ⅰ 父清盛への諫言約1時間57分
物語世界での重盛は、父清盛との関係において重要な役割を付与されました。巻一「清水寺炎上」の章段は、後白河法皇に不安を抱く父清盛に対する重盛の最初の諫言です。物語の作者が描き分ける二つの個性の、愛情を潜めた葛藤劇とその帰趨を追います。
第三講 倫理への殉死、そして治承のクーデターの発端 ― 平重盛
第六回Ⅱ 倫理への殉死約1時間44分
絶対的な権力者・清盛に対して、その嫡男重盛は、時代の人々の心を支配した仏教・儒教の徳目を一身に人格化した存在として物語世界に造型され、自ら備えた倫理の繋縛によってある選択をします。一夜見た夢によって一門の滅亡を確信した重盛は——。
第三講 倫理への殉死、そして治承のクーデターの発端 ― 平重盛
第七回Ⅲ 重盛と治承のクーデター約2時間16分
重盛が世を去って三ヶ月後の治承三年、清盛が突如数千騎の軍兵を率いて洛中に入り、公卿殿上人四十三人の官職を剥奪、関白藤原基房を都から追い、そして後白河法皇を——。清盛のこの敵対行為は、なぜ生まれたのか。その要因をうかがい、清盛・重盛父子の恩愛の様相を見つめます。
後半講座 第8回〜第15回
第四講 恩愛の彼方へ ― 平維盛
第八回Ⅰ 美貌の貴公子約1時間39分
平維盛は清盛の孫、重盛の嫡男として平氏一門の枢要な人物でした。しかし、源平対決の屋島合戦以前、屋島に陣を布く平氏一門を離脱し、那智の海に入水して果てます。『平氏系図』から、彼が背負った婚姻関係、幼・少・青年期、そして一軍の大将として軍陣に挑むまでを辿ります。
第四講 恩愛の彼方へ ― 平維盛
第九回Ⅱ 富士川合戦の虚実・維盛像造型の虚実約1時間49分
維盛が一軍を率いる大将軍として臨んだ富士川の合戦。彼の初陣ともいえるこの合戦を、まず三人の公家の日記、また鎌倉幕府の編述した『吾妻鏡』によって、史実としての様態を明らかにします。そのうえで『平家物語』がどのように描き出しているか、その虚実を見定めます。
第四講 恩愛の彼方へ ― 平維盛
第十回Ⅲ 紫雲の上の夢・蒼海の底の祈り約1時間35分
維盛の父・重盛の北の方は、後白河院の側近で平氏討滅を企てた鹿ヶ谷の陰謀の首謀者、新大納言藤原成親の妹。そして維盛の北の方は成親の娘でした。陰謀発覚後、成親は清盛に殺されます。類少なき苦難の境涯を背負うこの維盛夫妻は、しかしそれらを逆バネに、一層強い愛を強めてゆくのですが——。
第五講 滅亡の海 ― 壇の浦とその前後
第十一回Ⅰ 壇の浦の知盛、そしてその過去約1時間33分
壇の浦決戦の時を迎えます。すでに源平三対一の劣勢下にあった平軍の指揮官・平知盛は、決戦の火蓋が切られる折、船の屋形に立ち出で、「退く気持ちを捨てよ、運命尽きれば敗れるも致し方なし、されど名が惜しい、命を惜しむな」と全軍を叱咤し、檄を飛ばします。
第五講 滅亡の海 ― 壇の浦とその前後
第十二回Ⅱ 安徳天皇入水、そして母女院の帰洛と出家約1時間53分
物語の世界において、壇の浦合戦で安徳天皇を抱いて入水したのは、建礼門院徳子の母、幼帝安徳の祖母・二位殿時子でした。その脇には三種の神器の八尺瓊勾玉、腰には草薙剣が。二位殿の三種の神器をめぐる情念、そして幼帝の後世と一門救済を託された女院の動向をもあわせて見つめます。
第六講 寂光の里の祈り ― 六道輪廻の果てに
第十三回Ⅰ 大原へ、そして寂光の里約1時間29分
壇の浦の海に入水するも源氏の武者によって引き揚げられた女院(建礼門院徳子)は、髪を落とし、仏道に帰依します。大原の寂光院の傍らに方丈の庵を結び、母・二位殿に託された先帝の菩提、一門の救済を願う修道、勤行の日々を積み重ねていきます。女院の新たな戦いの日々の始まりでした。
第六講 寂光の里の祈り ― 六道輪廻の果てに
第十四回Ⅱ 後白河法皇と女院の六道語り、そして聖衆来迎(一)約1時間45分
後白河法皇が大原の里に閑居する女院を訪れます。法皇は庵室で久方振りに対面した女院の「御ありさま」を見て、天人の五衰の悲しみはこの人間世界にもあるものよ、という感慨を漏らし、女院の生涯を六道の輪廻になぞらえる、いわゆる六道語りが展開します。天道・人間道・餓鬼道——。
第六講 寂光の里の祈り ― 六道輪廻の果てに
第十五回Ⅲ 後白河法皇と女院の六道語り、そして聖衆来迎(二)約1時間38分
六道語りの最後、畜生道は女院の夢の出来事から。内裏にも勝る立派な宮殿、竜宮城に、先帝安徳をはじめ一門の公卿殿上人が列座します。竜宮城の苦しみとは何か。二位殿が伝えた「龍畜経」とは。さまざまな謎を孕み、建礼門院の物語を描き出す灌頂巻の核心部に通ずる、謎の扉に踏み入ります。
講師紹介

栃木孝惟とちぎ・よしただ
国文学者・千葉大学名誉教授
東京大学文学部国文学科卒業。同大学院博士課程単位取得満期退学。千葉大学教授、清泉女子大学教授を歴任し、現職。『将門記』『陸奥話記』などの初期軍記から中世軍記物語を専門とする。
著書に『平家物語』上・下(ほるぷ出版)、新日本古典文学大系『保元物語平治物語承久記』(共著、保元物語を担当、岩波書店)、『軍記と武士の世界』(吉川弘文館)、『軍記物語形成史序説―転換期の歴史意識と文学』(岩波書店)、『源頼政と〈平家物語〉 埋もれ木の花咲かず』(吉川弘文館)ほか共編著多数。軍記文学の特質に則り、歴史の中で文学を考え、文学を通して歴史を考えることを目指す。
あわせてご覧ください
- オーディオブック版が audiobook.jp で配信中本講座の音声版です。全15回・全6講の構成そのままに、耳から受講いただけます。
- 「収録を終えて」講師のことば #001 『平家物語』収録を終えた栃木先生による書き下ろしの寄稿文です。
- 「恩師と私」#001 琵琶奏者 坂田美子栃木先生の教えを受けた琵琶奏者によるエッセイ「平家物語と琵琶を通じて」。
- 講師ご紹介栃木孝惟先生の経歴と、ほかの講師陣のご紹介。
